2013年08月04日

山口事件の横溝派と清張派

山口の殺人事件を、”現代の八つ墓村”などと呼ぶらしいが、まったく馬鹿げた話だ。『八つ墓村』が実際の事件をモデルにしているからそうしたいのは解らないでもないが、今回の山口の被害者は5人だ。「ひとつの集落」という装飾語や「わずか14人」という母数を入れると大層に聞こえるが、5人という数が多いか少ないかは、冷静に考えないといけない事だ。

『八つ墓村』は実際の事件をモデルにしていると言われるが、それはシチュエーションを使っただけで横溝正史がかなりの脚色を加えている。実際の津山事件は病気、婚姻、村という地域社会が原因であって、祟りとか過去の因縁といった類のものではない。さらに言えば一小説の『八つ墓村』がこれだけ多くの人に知られるのはテレビや映画というメディアで商品化されたためで、そこには視覚的な色づけもされているからその不気味さはさらに強く見せられた。それが伝聞や断片的に広がって都市伝説よろしく読んだ事も見た事もない人に伝わっているのだから、『八つ墓村』は現実よりもさらに気味の悪い不可思議な話だったのだと思い込まされている。ましてや津山事件に関しては何をかいわんやだからだから、「津山ってどこだと思う?」と聞くと「東北とかじゃないの」などと間の抜けた答えが返ってくる始末だ。

ついでだから書いておくと、「平家の落ち人伝説」があった場所だなどという記事も目にしたが、これなどを見ると占い師のトークのごとき手法と言うしかない。こんな「平家の落ち人伝説」などは実は至る所にある。わたしも子どもの頃に住んでいる地方の話を聞かされたが、(あんな所に、そんな凄い事が・・・)などと思ったものだ。それは小学生の頃の話なのだが、要は今はそんな事を誰も教えないし、知りもしないのだ。仮に平家とは関わりのない場所であっても、ほとんどの場所で何らかの因縁は出てくる。日本の歴史には”戦国”などという日常的に戦いがあった時代もあったのだし、開国すれば外国と戦争をしていたのだ。ましてやこの狭い国土で数千年の歴史を数える国なのだ。真っさらな土地があるなどと考える方がどうかしている。

さてこれとは別種の考えを持つ人たちがいる。わたしも「これで広島の事件が消されるか・・・」と思ったものだが、ひとつの大きな事件を別の事件が起きる事で消すという手法だ。これは祟りは因縁ではなく陰謀論的なもので、横溝的な世界ではなく松本清張の世界と言える。
かつてあるマンガ家が「これからはもう横溝やない。清張読まな」と別のマンガ家に言われたらしいが、好き嫌い以外にも世のトレンドがどこに向かうかにアンテナを張り情報を仕入れる人がいる。
それとてもう何十年も昔の話で、今は横溝も清張も過ぎ去った遠い過去の作家でしかない。

今回の山口事件もまたぞろそのような清張的陰謀論を書く人も出てくるだろう。それを載せるメディアだが、横溝的なのはネット媒体や一般週刊誌、清張的なものは現代風のカストリ雑誌と別れてくる。ネット内での一般的な意見はそのどちらを好むか書き手によって分かれるが、いずれにしても誰かがつけた焚火をちょいとさわってワァワァと火の粉を飛ばしているだけである。そしてその煙を見て喜んでいる、というのが大衆というものであろう。

山口の事件などは都会からUターンしてきた人間の孤立感と閉鎖的な地域という、単純に言えばそれだけの事だ。
それでは売れないし話題にもならないから、八つ墓村だの落ち武者だのつけてみるが、現代社会の一つの問題が殺人という形になってしまった、というだけにすぎない。陰謀論的な見方をすれば家の周りの奇妙な装飾ややけに恣意的な川柳の存在は大いに役に立つ。犬の死そのものはそんな事件に巻き込まれてしまい引き取り手もないだろうから殺してしまった、とそんな感じだろうが、わざわざ逮捕の1分後に死んだなどとする理屈が腑に落ちなさを誘う。これなどは横溝派にも清張派にもひっかかる事だろう。

人それぞれ好みや考え方もあるだろうし、こんな事にうつつを抜かしておいて良いご身分の人もいればそうでない人もいる。わたしもあながち興味がないわけではないし、いろいろな解釈をするのは嫌いでもないから、他にする事があるのにこんなものをダラダラと書いてしまったわけで、もしここまで読んでいただけた方があるのなら、少しでも何らかの血肉にでもなっていてくれたら幸いだと思う。
posted by ryuga at 16:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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